2つ以上の障害を負ってしまったら障害年金は2つもらえるの? 障害年金専門社労士がわかりやすく解説!

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私が書きました
shiroki.sr

「二つの障害があるんだけど、年金は二本立てでもらえますか?」

「今、障害年金をもらっていますが、また別の病気が発覚しました。障害年金はどうなりますか?」

人によっては二つ以上の障害を負ってしまう場合があります。

精神科で通院していた人が交通事故で肢体不自由になってしまう…という場合もありますが、例えば糖尿病のように、一つの病気が目や足や腎臓、神経などに多数の障害を生じさせる場合もあります。

いずれにしても「障害年金は二本立てでもらえるのか?」という疑問が出てくるのは当然の話です。

しかし、残念ながら一人一年金の原則がありますので、障害がいくつあっても、障害年金は一人一本しか貰えません

では、二つ目以降の障害の取り扱いはどうなるのでしょうか?

この記事では、二つ以上障害がある場合について解説します。

まずは最も大事な点です。

二つ以上の障害がある場合、足して等級が上がる場合と、上がらない場合があります。

これは完全にケースバイケースですので、障害の種類や程度を見て判断する必要があります。制度は非常に複雑ですが、請求時点で考えるべきことは非常にシンプルです。

「もらえる年金額が一番高いのはどの請求方法か?」

という点です。

すでに受給権がある場合で、新たな障害が発生した場合は、その後発の障害を請求することで年金の額が上がるかどうかを見ます。

新たに請求する場合は、二つ以上の障害を足して年金額が上がるかを見ます。上がる場合は両方とも請求し、上がらない場合は、額の多いほうの障害だけで請求します。

また、単独の障害では軽すぎて障害年金を貰えない人も、複数の障害を組み合わせて受給できるような場合もあります。

請求する前から「この障害は何級になるはずだ」と見積もるのは困難なことも多いですが、基本的な考え方としては以上です。

なお、このように二つ以上の障害を併せることを「併合」と呼びます。

特別な手続きは必要ありません。二つ以上の障害について裁定請求したとき、もし要件を満たしていれば併合手続きが開始されます。

 

“二つ以上の障害がある場合の取り扱い”

  • 二つの障害を足して額が上がる場合→両方とも請求する
  • 二つの障害を足しても額が上がらない→請求する障害を選択する

 

1.併合しても等級が上がらない場合

例えば、現在うつ病(2級~3級程度)と肢体不自由(人工関節置換、3級相当)で障害年金の事後重症請求を考えているとします。

そうすると、精神・肢体のどちらで請求するのか、という判断が必要になります。

「うつ病なら2級の可能性があるので精神で請求する」とか「肢体で確実に3級を取る」という選択もあります。それを請求の難易度も含めて総合的に判断します。

この時、両方とも請求する意味はあまりありません。

なぜかと言うと、うつ病(2級4号または3級7号)と、人工関節(3級7号)は、足しても等級が上がらない組み合わせだからです。

何も考えず両方とも請求してしまうと、受診状況等証明書や診断書、病歴申立書などの書類が両方の障害について必要になります。コストも労力も余分にかかります。

ですから、無駄なコストや労力を省くために「いずれか有利な方だけで請求するべき」という判断をするわけです。

 

 

2.併合すると等級が上がる場合

等級が上がるかどうかの基準は、以下のリンク先の「併合等認定基準」によってきめられています。

併合等認定基準
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-2-1.pdf

上記リンク内に「別表1 併合判定参考表」というリストがあり、様々な障害について何級何号と定められています。

それを併合した結果を表したものが以下の併合認定表です。

 

表内の数値は号数を示しています。1号に該当すれば1級、2~4号に該当すれば2級、5~7号に該当すれば3級です。

先ほどの例を見てみましょう。

2級4号と3級7号を足しても「2」にしかならず(=2級2号止まり)3級7号と3級7号を足しても「6」にしかならない(=3級6号止まり)ため、複数請求をする意味がないということになります。

なお、この表に該当していたとしても、脳疾患や筋ジストロフィー等の疾病による肢体全体に広がる障害は、上肢と下肢の併合ではなく肢体障害として総合的に認定されます

その他にも、内科的疾患の併存複数の精神障害の場合などは、総合的に判断して認定されます。

ですから実務上、併合ができるパターンというのはそこまで多くありません。

しかし、併合によって等級が上がるというのは、つまり年金の額が上がるということですから、可能なケースについては押さえておく必要があります。

なお、2つの障害を足して等級が上がるケースは以下の四つになります。

  • 2級 + 2級 = 1級
  • 2級 + 3級5号 = 1級
  • 3級 + 3級5号もしくは6号 = 2級
  • 8号~10号 + 8号もしくは9号 = 3級

それぞれ解説をしていきます。

 

 

2-1. 併合で1級になるケース  (2級+2級=1級)

同一傷病で、2級相当の障害が二つある場合は、併合で1級になります

また、別傷病で2級の受給権が二つある場合も、併合されて1級になります

別傷病の場合、前発、後発のどちらかが障害厚生年金であれば障害厚生年金が支給されます。両方とも基礎年金なら、障害基礎年金になります。

結論としては以上ですが、制度上は少し複雑です。行われる処理が「併合改定」「併合認定」の二種類あるからです。

前発の障害後発の障害行われる処理
障害基礎年金2級障害基礎年金2級二つの受給権が併合される。前発の受給権は消え、新しく1級の障害基礎年金になる
障害基礎年金2級障害厚生年金2級二つの受給権が併合される。前発の受給権は消え、新しく1級の障害厚生年金になる
障害厚生年金2級障害基礎年金2級前発の障害厚生年金2級が額改定され、1級の障害厚生年金になる
障害厚生年金2級障害厚生年金2級二つの受給権が併合される。前発の受給権は消え、新しく1級の障害厚生年金になる(※)

※3番目のケースは額改定請求ですので、請求書類一式に額改定請求書を添付する必要があります。

※一番下のケースの障害厚生年金額は「後発の障害認定日時点の報酬比例部分」で再計算されます。

いずれの組み合わせも、結論として2級が1級になる点は変わりません。

もし2級の障害を二つもっている場合は、原則どちらも請求して1級にするのが望ましい、と言う結論になります。

 

2-2. 併合で1級になるケース (2級+3級=1級)

通常、二つの障害を併合して1級になるのは2級+2級のパターンだけです。

しかし、眼や耳の障害で3級相当だった場合は、障害の種類によっては2級+3級でも1級に該当するケースがあります。

具体的には2級の障害に、以下の障害(3級5号)を足した場合です。

これに該当した場合は併合が行われます。

同一傷病で複数の障害の場合は併合して1級になります。別傷病の場合は以下の取り扱いをされます。

初めて1級について詳しくは後述します。

前発の障害後発の障害行われる処理
障害基礎年金2級3級5号の障害後発の障害基礎年金2級が額改定され、1級の障害基礎年金になる
障害厚生年金2級3級5号の障害後発の障害厚生年金2級が額改定され、1級の障害厚生年金になる
障害厚生年金3級5号
(もともと2級以上)
障害基礎年金2級前発の障害厚生年金3級が額改定され、1級の障害厚生年金になる
障害厚生年金3級5号
(もともと2級以上)
障害厚生年金2級二つの受給権が併合される。前発の受給権は消え、新しく1級の障害厚生年金になる
3級5号
(もともと2級未満)
2級相当の障害初めて1級として請求するケース

※前発障害が3級5号だった場合、もともと2級だったが現在回復して3級相当になっている場合と、一度も2級になったことがない場合で扱いが異なります。

 

 

2-3 併合で2級になるケース (3級+3級5号または6号=2級)

3級の障害を二つ組み合わせても、通常は2級になりません。3級の障害は、大半が「3級7号」に該当するからです。

しかし、以下の障害については、もう一つの3級の障害と組み合わせることによって2級になります。

 

同一傷病の場合は2級として審査されます。

別傷病の場合の取り扱いは以下のようになります。

前発の障害後発の障害行われる処理
障害基礎年金3級
(もともと2級以上・停止中)
3級以下の障害前発の障害基礎年金が額改定され、2級の障害基礎年金になる
障害厚生年金3級
(もともと2級以上)
3級以下の障害前発の障害厚生年金が額改定され、2級の障害厚生年金になる
3級相当の障害
(もともと2級未満)
3級以下の障害初めて2級として請求

3級以下の受給権が複数あっても併合認定はされませんので、基礎年金が厚生年金になることはありません。

「初めて2について詳しくは後述します。

 

2-4 併合で3級になるケース (8号~10号+8号もしくは9号=3級)

これは3号未満の障害を二つ足して3級になるケースもあります。

併合判定表によれば、8号~10号の障害と、8号~9号の障害を併合すると7号相当、つまり3級として認定されます。

ただし「併合認定の特例」には以下の記載があります。

上肢(下肢)の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合認定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。

つまり、部位によっては併合表で3級に該当していても、障害手当金として扱われてしまいます。

 

 

2-5. 3つ以上の障害を組み合わせる場合

3つ以上の障害を組み合わせる場合は、以下のルールに基づいて行います。

① 一番軽い障害と、二番目に軽い障害を併合し、併合番号を見る

② ①で得た併合番号と、その次に軽い障害を併合し、併合番号を見る

これを繰り返していきます。

例えば視野障害(9号)視力障害(8号)上肢障害(6号)聴力障害(4号)があったとします。

その場合は、まず一番軽い視野障害(9号)と次に軽い視力障害(8号)を併合します。併合番号は「7号」になります。

得られた「7号」と次に軽い上肢障害(6号)を併合すると、併合番号は「4号」になります。

得られた「7号」と残った聴力障害(4号)を併合すると、併合番号は「1号」になります。

1号は1級相当に該当する為、併合結果は「1級」ということになります。

もし三つ以上障害がある場合は、3級の障害でも三つ組み合わせれば2級になります

ただし、7号と8号以下をどんなに足しても7号のままなので、障害手当金(8号)以下の障害がいくつあっても絶対に2級にはなりません

 

 

3.請求のパターン

実際に二つ以上の障害を組み合わせて請求する場合を見ていきます。

同一傷病の場合は、障害の種類ごとに診断書と病歴申立書を用意します。ただし視力や視野の併合、肢体同士の併合などは、一枚の診断書で済む場合もあります。

糖尿病からくる視力障害と肢体不自由のように、異なる種類の障害を併合してもらいたい場合は、「眼の診断書」「肢体の診断書」と両方取得して提出します。

原因傷病が異なる場合は、受診状況等証明書も複数必要になります。

提出するタイミングに制限などはありませんが、併合認定には非常に時間がかかるとの事なので、二つ以上の障害を新規で裁定請求で行う場合は同時提出が望ましいようです。

すでに受給権を持っている人が新たな障害で併合認定を望む場合は、通常通り請求を行います。併合改定に該当する場合は額改定請求書を添付します。

請求方法としてはおおむね以上ですが、障害が複数ある場合、例外的な請求方法になる場合があります。

「初めて2級(初めて1級)」と、「差引認定」です。

 

3-1.初めて2級(初めて1級)

初めて2級(初めて1級)とは、ある障害(3級以下)を持っていた人が、後発の障害(基準障害と言います)を負ったことによって併合して2級に該当する、という場合に行います。

「基準障害だけで2級に該当した場合」は初めて2級には該当しません。(初めて1級に該当する可能性はあります)。

「もともと2級以上の受給権を持っていた人が、更新で3級以下になった後に、新たな障害を足してふたたび2級になるケース」も”初めて”2級にはなりません。この場合、併合改定などの処理がされます。

①最初に3級以下の障害を負っていて

②新たに3級以下の障害を負って

③併合して初めて2級になった場合

という条件を満たした場合、この請求方法になります。

実務上はあまり多くありません。

初めて2級には大きな特徴があります。

通常、併合認定がされる場合は、受給権が二つとも認められる必要があります。しかし初めて2級の場合は、前発障害については受給権がなくても構いません

納付要件は必要なく、初診日当時の年金制度も不問です。

とにかく、「3級以下の障害が、後発の傷病と併合することで初めて2級になった」ことを証明できれば、後発の障害(基準障害)が2級として認定されます。

逆に言うと、「初診日が基準傷病より前にあること」「3級以下の障害だったこと」を証明する必要があります。

ですから、前発障害についても診断書をつけて提出することになります。

また、3級以下の障害と後発の2級以下の障害を組み合わせて初めて1級となった場合については、初めて1級として認定されます。

 

3-2.差引認定

差引認定とは、同一部位に複数の障害が発生した場合の認定方法です。併合認定とは逆に、前発の障害の影響を差し引くものです

例えば、ある人が学生時代(年金未納)に事故で視力障害(2級相当)を負ったとします。(保険料が未納のため障害年金が請求できない)

その後就職して厚生年金に加入した後(納付要件有)、再び事故に遭って完全に失明(1級相当)してしまいました。

障害厚生年金1級をもらえるでしょうか。

答えは「もらえない」です。もともと学生時代に2級相当の障害を負っているからです。

受給権は障害ごとに発生するので、1回目の事故は2級、2回目の事故は?級、という形で別々に認定が行われます。

この時、そもそも前発障害の受給権を取っていないので、併合認定や併合改定の問題にはなりません。

前発の障害が3級以下なら「初めて1級」による障害厚生年金の請求が可能ですが、前発が2級なのでそれも出来ません。

そうすると、この人が障害厚生年金を請求できるのは、2回目の事故で障害が増進した部分だけということになります。

しかし、この「視力減退」と「失明」という二つの障害を医学的に切り分けるのは困難です。

この時に行われるのが差引認定です。

この事例の場合、両目を失明したことによる活動能力減退率は134%です。

しかしこの人は、学生時代にすでに減退率84%の障害を負っています。

差引残存率は50%となり、これを差引結果認定表に照らすと、3級12号相当の障害厚生年金に該当します。

つまりこの人は「もともと2級の障害を負っていて、3級の障害をさらに負った」と言う差引認定により、3級の障害厚生年金を受給することになります。

実務上、差引認定が行われることは多くありません。

例えば交通事故で左足首を切断し(2級相当)、その後厚生年金加入中に別の事故で右足首も切断した(2級相当)と言うケースを考えます、

両足首切断の活動減退率は119%、前発障害の減退率が63%なので、現在の障害で負った減退率は56%、3級相当ということになります。

しかし、この場合は2級の障害厚生年金が請求できます。二つの事故の影響を医学的に切り分けることが容易であり、単独での等級認定が可能だからです。

また、「後発障害の減退率が差引残存率よりも大きいことが明らかな場合は、後発障害の減退率のみで計算を行う」と言う取り扱いもされています。

右足首切断が2級4号相当(79%)であることから、56%よりも大きいため、いずれにせよ差引認定は行われません。

 

 

5.まとめ

この記事では、障害が二つ以上ある場合の取り扱いについてまとめました。

足して等級が上がる場合もあれば、変わらない場合もあり、前発障害が差し引かれて等級が下がる場合もあります。内容は少し難しいかもしれません。

ただ、「二つ以上の障害を組み合わせた請求方法がある」という事を知識として知ることは非常に重要です。

二本立てで貰えないとわかると諦めてしまう人も多いからです。

年金に満たないような軽い障害を併合することで、年金を受給できるようになったケースもあります。

自分も年金額が上がるかもしれない、よくわからないという場合は、一度専門家に相談することをお勧めします。

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